| 中国の高速鉄道と青蔵鉄道 
 海外鉄道研究会会長 曽根 悟 
 
- 高速鉄道
 
「高速鉄路」が一般的だが、最近この用語の使用を意図的に避け、高速新線は「客運専線」、在来鉄道の高速化は「既有線提速」と呼んでいる。
 
- 高速新線としての四つのプロジェクト
- 北京−上海(京滬高速鉄路)
 
27駅 1300km TGV方式が有力とされている 
計画は大幅に遅れている。当初は2008年開業を目指していた
  - 北京−天津(京津城際軌道交通)
 
2005年7月着工 2007年に完工 2008年7月に営業開始予定 
116.9km 300km/h 2100億円 
車両はICE-3がベースのSiemens Velaro 60編成 定員600名
  - 上海空港磁気浮上鉄道(上海磁浮示範運営綫)
 
2001年3月着工 2004年1月1日営業開始。430km/h 2006年8月11日に火災事故発生 
龍陽路−上海浦東国際機場 30.5km 走行時間7分20秒 建設費1500億円
  - 上海−杭州浮上式鉄道
 
2006年2月に空港鉄道からの延長が決まった。169.7km 2010年の上海万博までに完成 
450km/h(当面の世界一狙う) 建設費約450億円(腑に落ちない) 
Thyssen KruppとSiemens製
   
 - 在来線の高速化
 
外国から輸入した高速鉄道車両を基に取り組む
 
- CRH(China Railway High-speed)シリーズ
 
CRH-1はボンバルディアのRIGINAをベースにしたもの 
CRH-2はJR東日本E2-1000系をベースにしたもの 
CRH-3はドイツのICE-3ををベースにしたもの 
CRH-5はアルストームのSM3型をベースにしたもの 
4は中国でも不吉なのでCRH-4というシリーズは存在しない 
各形式480両(CRH-1は320両) 
完成車は僅かで殆どは現地生産
  - CRH-2について
 
値段は最も高く居住性も悪いかも知れないが信頼性は高いのではないか 
プロトタイプは日本から輸出 
量産車は青島市にある中国四方機車車両廠と日本の川崎重工との共同製造 
現時点で26編成を製造済み 
最高速度200km/hだが当面は160km/h 
青島−済南間で250km/hの試験に成功 
当面の営業運転予定区間 2007年1月20日〜 北京−南京 上海−杭州 北京−邯鄲 
1月24日〜 青島−済南 
2月4日〜  北京−武漢 
1月の講演時点では上記区間で試運転中。
  - 中国独自開発の高速電車
 
技術導入をする一方で自国でも独自に取り組む 
わが国が1930年前後に各国から電気機関車を輸入して取り組んでいたことを想起させる 
新幹線300系のブレーキシステム失敗の教訓から、M車の比率を相当高くしないと良いブレーキシステムが出来ない旨をアドバイス 
そのせいか(?)M車比率が高くなっている。
 
- 先鋒号 2001年5月製造 4M2TAC25kV/50Hz誘導機駆動
 
同年在来線試験で249.6km/h 
秦瀋客運専線上の試験で292.6km/h(中国での最高速度記録)
  - 中原之星号 2001年11月営業運転開始 4M2T/8M6T AC25kV/50Hz 誘導機駆動
 
最高速度160km/h
  - 長白山号 2005年4・5月高速運転試験に成功 6M3T AC25kV/50Hz
 
設計最高速度210km/h 営業運転最高速度200km/h
   
韓国でもフランスから技術輸入する一方で自国でも取り組んでいる。
   
 - 台湾の高速鉄道(台湾高鉄)
 
台北−高雄 27駅 300km/h 建設費約1.8兆円 
1990年から計画。1998年に台湾高鉄が発足しBOT方式でICEで一旦決定 
同年のICE Eschede事故と翌年の集集大地震によりドイツ方式から日本方式へ 
すべて日本方式になったわけではなく各国技術の混成(高鉄曰く"Best Mix") 
度重なる工期遅延により2007年1月にようやく板橋−左営間試験開業 
設置駅 (南港−)台北−板橋−桃園−新竹−(苗栗)−台中−(彰化)−(雲林)−嘉義−台南−左営(−高雄) 
*カッコ内は計画駅。台北駅は2007年2月開業
   
 - 青蔵鉄道
 
ゴルムト(格爾木)とラサ(拉薩)の間 1142kmが2006年7月1日に仮開業 
線路容量は1日8往復で設計(単線) 
最高地点の唐古拉峠は5072m 
永久凍土上への線路敷設や低い気圧など技術的な課題も多い 
機関車は高地専用のディーゼル機関車GE NJ2 
電源車兼酸素供給車を機関車次位に連結 
客車は機密性の高い構造。
   
*中国の簡字体 台湾の繁字体の各漢字は日本の新字体に変えてあります。
 (2007/01/14 海外鉄道研究会総会にて、文責:森村) 
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