Southern Steam Spectaculer

 去る10月5日から7日の3日間、オーストラリアのニューサウスウエールズにおいて、大規模なSLの運転が行なわれた。今回使われた蒸気機関車は、オーストラリアの代表的な本線急行形蒸気の3800シリーズの3801、3830。また、普段なかなかお目にかかれない、古典機3112、1210、さらに、C型テンダーの2705という合計5両。中でも、3801は、その砲弾型とも言える独特の形状で知られ、3830とともに、緑色の鮮やかなカラーでオーストラリアでも、抜群の人気を誇る機関車だ。

<1日目>
 まず、シドニーを3112+3830の重連で出発。編成も、かつてを偲ばせる、オーロラの銀色の編成に、旧型客車を従えた堂々たる編成だ。途中、ピクトンまでこの組み合わせで、ピクトンで、3112から2705へバトンタッチする。ここから、モスベールまでは、2705+3830で先頭に立つ。
 2705は、NSW鉄道博物館で、週末運転されることも多いようだ。この先、かなりアップダウンのある路線で、黒い煙を目印に、列車を追いかけて行く。そして、モスベールで、いよいよ3801の登場となる。3801+3830の重連となり本線を駆けて行く姿は、やはり迫力がある。
 ゴルバーンで、キャンベラに向かう線に進路をとる。こちらは、SLが走る機会のめったにない路線だ。オーストラリアらしい、牧草地に囲まれた路線を鮮やかな列車が、スピードを上げる。ビデオファンには、絶好のポイントが、何ヶ所も現れる。次の停車駅、タラガで1210を連結し三重連となる。オーストラリア一番の古典機の登場だ。よく磨かれた古典機が、午後の日差しに輝いている。列車は、山間を抜け、首都キャンベラへと向かった。

<2日目>
 キャンベラを真夜中に出発した列車は、再びゴルバーンから、南部本線に戻り、夜を徹して走る。一足先に、途中のハーデンに宿を取っていたので、夜明け前から待ち構える。朝日を浴びて、緑色の機関車がきらりと輝く。早起きした甲斐があるというものだ。ここで、給水のためしばし機関車も休息。ちなみに、今日は3830+3801の重連で、いよいよ、NSW南部の高原地帯に挑む。クータムンドラへ向けての峠越えは、このルート随一の難所と言えるだろう。ここでは、さすがの重連もあえぎながら登って行く。青空に二条の煙が映える。
 クータムンドラを過ぎると、俄然スピードアップ。追いかける車も、90キロ以上出しているのだが、追いつかない。謳い文句では、110キロで走るとなっていたが、まさにその通り。なだらかな、丘陵地帯や平野部では、急行型の本領発揮である。それでも、給水を兼ねた停車やなどがあり、何とか追いつけるといったところか。この、追いかけは、列車の折り返し地点であるオールバリーまで続いた。オールバリーは、NSWとビクトリア両州の州境の町である。一昨年には、ここからさらに、3801もビクトリア州まで乗り入れたことがあったが、今回はここでの折り返しとなる。しかし、折り返しの出発は深夜になるので、我々は先にハーデンへ戻って、翌朝に備える。

<3日目>
 早朝、クータムンドラで、3日目のご対面。きょうは、3801+3830となっていた。再び峠越えに挑む。昨日とは反対方向だが、やはり上り坂はきつい。さすがに110キロ走行という訳にはいかず、車で先回りも可能となる。
 しかし、ハーデンを過ぎるとまた、スピードアップし、シドニーを目指す。途中では、列車に乗っている人のために、一度列車を止めて、フォトランも一回行なわれた。予定では、ゴルバーン、モスベール、ピクトンと、1日目のルートと同じ路線を帰ることになっていたが、急遽、モスベールからウロンゴンを経由する、海岸線のルートに変更になった。どうも、山火事の注意報が出たようで、林間のルートを避けることになったようであった。
 結局、定刻では18:45着であったのが、約1時間程度の遅れとなったが、無事シドニー中央駅に到着し、このSL運転もフィナーレを迎えたのだった。

 今回のイベントは、オーストラリアでは、10月の第1月曜が、祝日となっているため、多くの人が3連休になることから、この日が選ばれたようです。
 やはり、これらの運転会は、こうした日程で行なわれることが多いようです。
 また、企画運営は、38シリーズの動態保存を行なっている団体3801LimitedとNSW鉄道交通博物館の協力のもと行なわれました。
 なお、IRSJより、八木、小口、柴崎、山本が参加し、その友人1名もジョイントしました。

写真:八木 正紀


普段は、Thirlmereの鉄道博物館で、余生を過ごす2705もこの日は、3830と組んで本線に乗り出す。


ゴルバーンは、開拓時代からの古い町であると同時に、シドニーから来てメルボルン方面とキャンベラ方面に分岐する鉄道の要衝。SLも給水を兼ねてしばし休憩。


19世紀の古典機も登場。磨き上げられた車体は眩しいほどだ。


2日目の早朝ハーデンに到着。朝日を浴びてグリーンの車体が一層映える。