中澤 文武
KTXが開業し、韓国鉄道公社が発足してから、目をみはるように発展している韓国鉄道を紹介します。1.躍進するソウル首都圏の近郊鉄道網
ここ2、3年で、ソウル近郊の国電(広域電鉄)網は一挙にひろがった。いずれも既設の一般路線を電化、複線化、電車対応の駅の増設、場所によっては線路付け替えや高架化を行ったもので、長距離列車や貨物しか走らなかった区間に、1時間当たり少なくとも3本〜4本の電車が走るようになり、バスしか手段のなかった地域輸送に大きく貢献している。沿線の開発はこれからといったところでのどかな景色を走る所が多い。全体的に言えることだが、パターンダイヤには全くなっておらず、運転間隔にはバラツキがあり、混雑にも影響する。
中央電鉄線。この路線は今まで単線で、周辺の駅に列車は停まらず、近郊輸送には全く使えなかった。ソウル近郊東部の九里(クリ)市、南楊州(ナムヤンジュ)市にとっては待望の電車だ。かなり派手に線路付け替えを行い、高架化も進展、山を越えるのでトンネルもあるし、漢江の景色も望める。この路線には新型車が優先的に入る。
京釜線急行電車。京畿道西井里(ソジョンリ)駅。ソウル龍山駅と天安駅を1時間30分で結ぶ、この路線の目玉。車両は通勤電車で日中1時間おきの運行ながら、スピードが速く、沿線の長距離バスから相当の利用客を転移させている。面白いのが線路の選び方。大阪の新快速みたいに複々線を活用する。
2.車両の塗装変更すすむ
韓国鉄道公社の新CIの一環として、車両の塗り替えが急ピッチで進んでいる。
7000型電気式DLの新色
在来の5000型電車の新色
3.電化の急速な進展
20世紀中は限られた区間しか電化されず、最大の幹線であるソウル-釜山間ですら非電化であった。KTX開通をきっかけに、湖南線全線(大田-光州、木浦)を始め、このほど京釜線ソウル-釜山全線の電化が完了した。但し、列車はいまだDL牽引中心であるが、徐々にEL牽引の列車も増えている。
沿線住民には架線そのものが見たことなき存在であり、感電事故も結構発生。駅や陸橋などには大きな架線注意の看板が掲げられている。ちなみに電化が進まなかったのは、防衛上の理由。
4.元気な貨物輸送
韓国での鉄道貨物のシェアは高い。年間総量4600万トンは日本よりむしろ多い。最も多いのがセメント輸送で、鉄道貨物全体の3割強を占め、全国で当たり前のように見かける。
大幹線の京釜線では釜山とソウルの間でランドブリッジを形成し、コンテナ輸送が盛ん。輸送するコンテナは全てISOコンテナであり、JRのような鉄道ローカルサイズのものは皆無である。コンテナ荷役も大掛かりで、コンテナ扱いにはリーチスタッカーを普通に使用している。そのかわりJRのようなE&S荷役は出来ず、入れ替えが必要になる。列車の最高速度も100kmを超える。
一方いわゆる車扱い貨物も多く、貨物駅は集約されていない。全国の比較的小規模の駅でも、都市の中心になる駅では当然のごとく貨物扱いを行っている。そういう駅では有蓋貨車1輛単位での扱いも健在だ。そのほか、JRでは絶滅した車運車や鉱石用ホッパ車、はてには軍用貨車まで走っている。
ソウル近郊では、南部の儀旺市、北部の城北駅付近、西部の水色駅に大規模な貨物駅が存在する。武蔵野線や東海道貨物線のような貨物専用路線が存在せず、貨物列車は通勤電車用路線を共用する。
コンテナ列車。JRのコキ106に似たものと、コキ200に似たものがある。ISO20ftを3個積載可能。